大腸カメラ検査

大腸ポリープは全て切除すべき?がん化するポリープと放置していいポリープ

「大腸にポリープがあります」と検査後に告げられると、ほとんどの方が真っ先に「がんですか?」と不安になります。しかし、大腸ポリープの全てががんということはありませんし、全てのポリープが将来必ずがんに変化するわけでもありません。実はポリープにはいくつかのタイプがあり、がんになりやすいものと、ほとんど心配のいらないものがあるのです。正しい知識を持つことで、必要以上に怖がることなく、冷静に適切な対応をとっていただけるはずです。

ポリープのタイプとがん化のリスク

腺腫(せんしゅ)

大腸で見つかるポリープ全体の約70%を占めます。腺腫は良性の腫瘍ですが、放置すると数年から十数年という長い年月をかけて、がんへと変化する可能性があります。この過程は「腺腫-がん連関(adenoma-carcinoma sequence)」と呼ばれ、正常な粘膜→小さな腺腫→大きな腺腫→がんという段階的な変化を経ます。特に大きさが1cm以上のもの、絨毛(じゅうもう)状の成分を多く含むもの、細胞の異型度が高いものはがん化リスクが高いとされ、腺腫は原則として発見時に切除が推奨されます。5mm以下の小さな腺腫であっても、見つかった場合はその場で切除するのが現在の標準的な方針です。

過形成性ポリープ

一般的にがん化のリスクが非常に低いタイプです。直腸やS状結腸によく見られる5mm以下の小さな過形成性ポリープは、基本的に切除せずに経過観察で問題ないとされています。ただし、大きなもの(10mm以上)や右側結腸にあるものは注意が必要な場合があります。

鋸歯状(きょしじょう)ポリープ

近年、特に注目を集めているタイプです。以前はほぼ無害な良性ポリープと考えられていましたが、最近の研究で一部の鋸歯状ポリープは腺腫-がん連関とは異なる別の分子経路(鋸歯状経路)でがん化する可能性があることが明らかになってきました。特に右側結腸(大腸の奥のほう)に存在する大きな鋸歯状ポリープは、積極的な切除が推奨されます。平たんな形をしていることが多く、通常の内視鏡観察では見つけにくいという特徴もあり、経験豊富な内視鏡医による丁寧な観察が重要になります。

見逃しを減らす最新の検査技術

大腸カメラ検査は大腸の粘膜を直接観察できる最も精度の高い検査ですが、それでも一定の割合でポリープの見逃しが生じることが知られています。van Rijn JCらのメタ分析では、大腸カメラにおける腺腫の見逃し率は約22%と報告されています(van Rijn JC, Am J Gastroenterol, 2006)。特に平たんな形状のポリープや、腸のひだの裏側に隠れたポリープは肉眼では見つけにくいのです。だからこそ定期的な検査が大切です。

近年では、人工知能(AI)を活用した内視鏡診断支援システムの開発が急速に進んでいます。Soleymanjahiらの研究によると、AI支援を併用した大腸カメラ検査では腺腫発見率(ADR)が44.7%に達し、AI非使用時の36.7%と比較して統計的に有意に向上したことが報告されています(Soleymanjahi S, Annals of Internal Medicine, 2024)。当院でも最新の内視鏡システムを導入し、一人ひとりの患者さんに対して丁寧で精密な検査の実施に努めています。

定期検査で大腸がんを予防しましょう

ポリープが見つかった場合、そのタイプ・大きさ・個数などに応じて、次回の検査時期が決まります。腺腫を切除した方は一般的に3年後の再検査が推奨されます。リスクの低いポリープのみであった場合は5年後でよいこともあります。

大腸がんの多くは、ポリープの段階で発見し切除することで予防が可能です。「ポリープが見つかった」というのは怖いことではなく、むしろ「がんになる前に見つけることができた」という幸運な出来事と考えてください。

特にご家族に大腸がんや大腸ポリープの方がいらっしゃる場合は、遺伝的にポリープができやすい体質である可能性があります。40歳を過ぎたら一度は大腸カメラ検査を受けておくことを強くおすすめします。また、以前の検査でポリープを切除したことがある方も、新しいポリープが発生していないかを確認するために定期検査が必要です。