大腸カメラ検査

過敏性腸症候群(IBS)の下痢・便秘。大腸カメラで他の病気を除外する重要性

「ずっとお腹の調子が悪いけど、病院に行っても原因がわからない」「下痢と便秘を繰り返して、毎日がつらい」「大事な場面に限ってお腹が痛くなるのが怖い」。こうしたお悩みを抱えていらっしゃる方は、実はとても多いです。もしかすると、過敏性腸症候群(IBS)かもしれません。しかし、IBSだと思い込んでいたら、実は別の病気が隠れていた――そんなケースも少なくないのです。今回は、IBS症状がある方にとって大腸カメラがなぜ重要なのかについてお話しします。

IBSとはどんな病気?

過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)は、腸に炎症や腫瘍などの器質的な異常がないにもかかわらず、慢性的な腹痛・下痢・便秘・お腹の張りなどの症状が続く病気です。ストレスや食事、生活習慣などが関係していると考えられており、IBSの有病率はおよそ10%とされています(機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群)。診断には「ローマ基準」と呼ばれる国際的な基準が使われますが、あくまで他の病気を除外したうえでの診断(除外診断)です。つまり、IBSと診断するためには、まず他の病気でないことを確認することが不可欠です。

IBS症状の裏に隠れている可能性のある病気

大腸がん
潰瘍性大腸炎やクローン病(炎症性腸疾患:IBD)
大腸ポリープ
セリアック病
感染性腸炎
甲状腺機能異常
大腸憩室症

特に注意が必要なのが大腸がんと炎症性腸疾患です。これらはIBSとよく似た症状を引き起こしながら、放置すると命に関わる深刻な病気です。実際、IBSと診断されていた患者さんが大腸カメラを受けたところ、大腸がんやポリープが見つかったというケースは珍しくありません。

こんな「アラームサイン」があれば大腸カメラを

  • 原因のわからない体重減少
  • 血便が出る
  • 発熱が続く
  • 50歳以上で新たにお腹の症状が出てきた
  • 夜間に目が覚めるほどの腹痛や下痢がある
  • 貧血を指摘された
  • ご家族に大腸がんの方がいる

これらの症状は「アラームサイン(警告徴候)」と呼ばれ、IBSではなく別の重篤な疾患の可能性を示す重要なサインです。このようなサインがある場合は、速やかに大腸カメラによる精密検査を受けることが強く推奨されています。

IBSの診断には「除外診断」が不可欠

IBSは「他の病気が見つからなかったとき」に診断される病気です。逆に言えば、きちんと大腸カメラや血液検査などで「他の病気がない」ことを確認してから初めて「IBS」という診断が正確に成立します。特に大腸カメラは、大腸の粘膜を直接観察できる唯一の検査です。炎症・潰瘍・腫瘍・ポリープなどを見落とすことなく確認できるため、IBSの診断プロセスにおいて極めて重要な役割を担っています。症状が長引いている方や、これまで一度も大腸カメラを受けたことがない方には、ぜひ一度ご検討いただきたい検査です。

大腸カメラで安心を確かめることがIBS治療の第一歩

もし大腸カメラの結果が「異常なし」であれば、それはとても大切な情報です。「腸に病気はない」という事実が確認されることで、IBSの治療(食事・生活習慣の改善、薬物療法、ストレスケアなど)に安心して取り組むことができます。反対に、もし何らかの異常が見つかれば、早期に適切な治療を始めることができます。どちらの結果であっても、大腸カメラを受けることはあなたの健康を守るための重要な一歩です。「IBS症状があるけれど、一度もカメラを受けたことがない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。